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Journal lablab
2025.06.01

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

浜松市南部・卸商団地の再生と挑戦 Revitalization and Challenges of the Wholesaler Complex in Southern Hamamatsu City

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

浜松市南部に位置する「卸商団地」をご存じでしょうか?
かつて繊維を中心とした卸商の集積地として発展したこの地域は、時代の波に揺れながらも、今新たな転機を迎えています。
私たちマストレの海外事業部も、ここ卸町団地にオフィスを構えて10年が経ちました。
今回は、団地の中心に位置し、現在は「アルラ」の愛称で親しまれる浜松卸商センターの事務局長・今田さんに、卸町団地の成り立ちから、
現在の街づくりの取り組み、そして未来の可能性についてお話を伺いました。

高度経済成長期に急成長を遂げ、「協同組合浜松卸商センター」を設立 During the period of rapid economic growth, it achieved remarkable expansion and established the 'Hamamatsu Wholesale Cooperative Center.'

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

私が入社する随分前のことですが、卸商団地が出来るまでの経緯をお話します。卸商団地のルーツは昭和40年代の高度経済成長期にさかのぼります。
当時、繊維を中心とする卸商の事業者たちは、浜松市中心部の問屋街で急成長を遂げていました。しかし手狭な土地と深刻化する交通事情のなかで限界を迎えつつありました。
そうした背景から、郊外への集団移転という大きな決断が下され、昭和43年3月21日、「協同組合浜松卸商センター」が設立されました。これにより、中小卸売業者の集団化による自主的な経済活動と地位向上を目指す取り組みが本格化したのです。
昭和46年に完成した卸町団地には、約200社の中から選考を経て約100社が入居。土地の買収は組合主導で行われ、当時の経営者たちは日中の業務を終えた後に、地元地主と何度も交渉を重ねたそうです。「同じ志を持つ者たちで、この団地をつくりあげる」という情熱と団結力が、かつての卸本町を形作った原動力でした。
建物はすべて長屋式の連棟構造。車を店先に停められる設計により、仕入れ業者がスムーズに買い回りできる利便性の高い団地となりました。現在、全国にはおよそ140か所の「卸町団地(流通団地)」がありますが、連棟型の卸問屋が集積し、一体となって機能するスタイルは全国的にも稀で、とても貴重な存在です。また、企業が集約されたことで、福利厚生や社員旅行、3,000人規模の運動会といった、働く人の誇りやモチベーションを高める環境が整えられていきました。

時代の波により苦境に
立たされる「卸業」 The wholesale industry is in a difficult situation due to the changing times

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

「卸業に徹し、小売は行わない」という理念のもと、浜松市にある卸商団地は長年にわたり地域の流通拠点として重要な役割を果たしてきました。かつては多くの地元商店街との取引が盛んに行われ、地域経済を支える存在でした。しかし、車社会の進展や郊外型大型商業施設の普及により、商店街の衰退が進み、団地の取引先も次第に減少していきました。こうした時代の変化を受け、団地に入居する企業も事業転換を迫られるようになり、団地全体として新たな存在意義の模索が始まりました。現在では、三代目にあたる若手経営者たちが中心となり、伝統を大切にしながらも現代的な視点や柔軟な発想を取り入れた取り組みが進められています。彼らは過去の成功体験に固執せず、起業家精神を持って業態の転換や新規事業の展開、多角化などに積極的に挑戦しています。団地は今、再び地域に根ざした価値を創出する場として、新たな歩みを始めています。

浜松市で初となる
「地区計画改定」が実現 Hamamatsu City's first "district plan revision" realized

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

こうした時代の流れに柔軟に対応し、卸商団地をより自由で多様な用途に活用できるようにしたいという強い想いから、平成12年に若手経営者たちを中心とした委員会が発足しました。委員会では、これまでの「卸売専業」という枠を見直し、地域や時代のニーズに即した新たな団地の在り方を模索する議論が本格的に始まりました。

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

私自身、平成14年に「協同組合浜松卸商センター」へと転職し、着任早々からこの将来を見据えた大きなプロジェクト、すなわち地区計画の見直しに携わることとなりました。団地特有の産業集積地としての役割を理解してもらうため、行政との間で粘り強く対話を重ね、「ここは単なる農地や宅地とは異なり、地域のまちづくりにふさわしい空間である」と訴え続けました。その結果、平成16年には浜松市において初となる「地区計画の改定」が実現し、卸団地の再生と新たな可能性に向けて、記念すべき第一歩を踏み出すことができました。

卸町団地が直面する
現状の課題「老朽化」 The current issue facing the Oroshimachi housing complex: "aging"

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

現在の課題のひとつは施設の老朽化です。団地の中心に位置する「本町ビル」は昭和50年に竣工し、かつては宿泊・飲食施設としてビジネス客でにぎわっていました。しかし、時代とともに廃業し、再来年には解体予定となっています。この本町ビルは、団地のコアゾーンにあたるため、新たに建て替える際には「公に近い施設」が求められるなど、行政上の制約もあります。しかし、街の活性化の起爆剤になるような中心施設にするために、組合員と協議を重ねているそうです。
現在、ビルのテナントには約50社の組合員と、賃貸で入居している約40社の賛助会員がおり、ほどんどのテナントを利用されている状況です。
店舗として営業している事業者様ばかりではありませんので、シャッターを上げていない事業者様も多いですが、今田さんは、「シャッターを上げてくださいね!」とお願いされているそうです(笑)。業種の多様化が進む一方で、団地としての一体感が薄れている一面もありますので、バランスを取るのが難しいところだそうです。

希望の芽「マストレ」の
挑戦と、その広がり The challenge of "Masstrading," a seed of hope, and its expansion

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

そんな中、この街に新たな風を吹き込む事業者も現れています。新規参入の異業種でありながらも組合に加入し、他業種とのつながりを活かして、団地内で新たなビジネスを展開している企業もあります。
団地ならではのフラットな交流と情報共有を通じて、徐々に活性化の兆しが見え始めているのです。
中でもターニングポイントとなったのが「マストレ」の存在だそうです。
今から約10年前、悲しいほどに人通りが少なく、老朽化した物件が目立っていた卸商団地に、マストレが出店を希望しました。
今田さんから、このような嬉しいお言葉を頂きました。
「マストレさんは、ただ出店されるのではなく、洗練された外内装はもちろんのこと、物件の雨漏り修理や配管工事を含めた大規模なリノベーションを行い、“団地らしからぬ店舗”に生まれ変わらせていただきました。
マストレさんの熱意と本気度はやがて周囲を動かしました。企業からの視察や出店相談が手に取るように増加したのです。
マストレさんの店舗をロールモデルとして案内する機会も多くなり、まさに団地再生の象徴的な存在となりました。」

マストレが管理する物件では、新たに美容院やブライダルショップといった異業種の出店も検討中です。
地域活性の核となれるように、今後とも情報を発信していきたいと考えております。

かつての“卸のまち”からこれからの“交流と創造のまち”へ From a former 'wholesale district' to a future 'hub of exchange and creativity'

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

卸本町では、年4回の「オープンマーケット」や、年2回の人気マルシェ「アリー」が開催され、地域に開かれた場所としての魅力も高まっています。
また、最近では特撮ドラマなどのロケ地としても活用されるなど、その独特の街並みが都心部からも注目されています。

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

今後は「B to B」の卸業という本来の役割を尊重しつつ、新たな業種や働き方を柔軟に受け入れ、団地特有の一体感を再構築していくことが求められています。
この街に思いを持ち、実際に行動に起こす事業者との出会いを、心待ちにしているそうです。
私たちも、卸本町団地のさらなる飛躍のために、これからも「共に創る」精神で、街と人とをつなげていきたいと考えています。
そして、卸町団地が、かつての“卸のまち”から、これからの“交流と創造のまち”へと生まれ変わるその瞬間に、私たちも立ち会っていきたいと願っています。

浜松市南部「卸商団地」の再生と挑戦

私たちマストレも、この地に根を下ろして10年。最初は「ここでやっていけるのか?」という不安もありましたが、ひとつひとつの出会いや経験が、確かな希望へと変わっていきました。
今、卸町団地は“再生”というより、“進化”の途上にあります。今までの経験を大切にしながらも、新しい挑戦を受け入れ、地域の可能性を信じて行動する人たちが確かに増えています。
私たちも、そんな「共に創る」仲間の一員でありたいと思っています。
卸町団地の未来は、きっともっと面白くなる。だからこそ、これからも地域と歩み、挑戦を続けていきたい、そう強く感じました。

tatsuyuki miyajimamiyajima
宮島 辰之
株式会社マストレ 海外事業部
PROFILE
名古屋市から転職してマストレ海外事業部に配属されて早15年。毎週全国を駆け回り、国産ロートアルミの訴求に日夜奮闘しています。
カレーとゲームが大好きです。
宮島

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  • 趣味はスポーツ観戦と美味しいもの巡りです。
  • あちこちのラーメン店を巡るのが楽しみです!
  • 音楽を聴くことと子育てが大好きです。
  • カレーとゲームが大好きです。
  • 事業所内に私の作品(絵手紙)などを飾っています
  • 臨床工学士です!
  • ネコのお世話とバンド練習が休日の楽しみです!
  • 好きなことはドラマを見ることです。
  • 休日はゴルフの練習をしています!トマトが大好物です。
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