2025 August
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家を買うベストタイミングとは?年齢別のメリットと注意点
【許可宅地】という言葉をご存知ですか?
なかなか聞き慣れないかもしれませんね。
許可宅地とは、都市計画法や建築基準法などの法律のもと、住宅などの建物の建て替え・増築・解体などを行うにあたって、行政機関の許可が必要な土地を意味しています。
最もわかりやすい原則としては、宅地の所有者だけにその土地での建築や増築が許されていることです。
つまり、第三者にその土地を売ったり、譲渡することができない宅地ということですね。
似たような意味合いで「市街化調整区域」という言葉はもう少し馴染みがあるかもしれません。
市街化調整区域は、こちらも法律に基づいて定められた区域のことで、昭和47年(1972年)、無秩序な都市の拡大を防ぐために制定され、原則して、住宅などの建物を建築することが禁止されている地域のことを指します。
不動産仲介を行うマストレの営業職にとって、許可宅地、市街化調整区域というのは、どちらもつねに頭に入れておかなければいけないワードとなるのですが、今回は【許可宅地】について、私が最近経験したエピソードとともにお伝えしていきます。
担当したのは、浜松市の北部に佇むのどかな住宅地。お問い合わせの内容は、土地と建物の相続に関するものでした。
120坪ほどの土地に建てられた築40年ほどの立派な木造家屋。
ここはもともとご依頼主様のご実家で、家を出られてからは、お母様が住われていたとのことでした。
しかし、残念なことにお母様がお亡くなりになったことで、土地と建物を相続することになったのです。
ご要望を伺うと「どなたか買い手が現れてリフォームなどして住んでいただけるとうれしいし、買い手が見つからないようなら更地にすることも考えている」とのことでした。
私としてもこの時は「相続のよくあるケースかな」くらいにしか思っていませんでしたし、建物に対してかなり強いご愛着をお持ちのようでしたので(思い出が詰まったご実家ですし)、まずは丁寧に査定金額を割り出して、買い手が付くようにすることを最優先に進めようと考えました。
万が一、買い手が付かなかったとしても、120坪という広い土地です。
更地にして分譲会社へ売却すれば、きっとご依頼主様に喜んでいただけるはずと思っていたのですが…。
お察しの通りですが、実際にいろいろ調べてみると、そんな簡単な話ではありませんでした。
そうです、このご依頼主様の土地こそが【許可宅地】だったんです(苦笑)。冒頭でもお伝えしましたが、許可宅地というのは、行政機関の許可がないと第三者に売却などができません。このことはご依頼主様にとっても初耳だったようで、最初はかなり驚かれ、落胆されていました。もちろん私も「まさかそんな落とし穴が…」と思いましたね。でも、許可宅地であることを知らずに「高く売れますよ」なんて提案をしてしまったら、それこそご依頼主様との信頼にヒビが入りますし、事前に許可宅地であるとわかったからこそ、「ならどうしよう?」と、すぐに方向転換をすることができました。解決法はすごくシンプルで、「行政機関の許可」さえいただければ、制限を外すことができます(実際はいろいろ調べたり、資料を作ったりと大変なのですが…)。そこでまず取り組むのが、行政機関(浜松市)との調整です。お客様が相続される土地・建物が「譲渡しないと仕方がないもの」ということを認めてもらうために、さまざまな角度からの根拠をまとめた「理由書」を作成し、それを市の関係部署に提出して、協議してもらう手続きを進めていきました。こんな言い方をするのは何ですが、市だって、空き家が増えることはイヤなはずなので、いかに「このままだと空き家になってしまいますよ」「相続される方がここに住める状況ではありませんよ」ということをしっかりと「理由書」に盛り込んで、協議をしてもらうことが重要になってきます。許可を得るためのテクニックやノウハウみたいなものは上司や先輩からアドバイスをいただき、マストレのデータベースから過去の似たような事例を引っ張ってきて参考にしたりしました。
結果、無事に許可がおり、ご依頼主様が相続する土地・建物を第三者へ売却できるようになりました。
ただ、売却するにあたって、事前に敷地内にある倉庫などの解体費用が必要となってしまいました。
そういったご負担が生じることも真摯に説明を重ねて、最後には快くご納得いただけたことも、私にとってすごく大きな達成感につながりました。
その代わり…というわけではありませんが、査定金額をお出しする際には、本来ゼロ査定となるであろう建物にも評価を付けさせていただき(「愛着のある建物」というご依頼主様のお気持ちを考慮しました)、大変喜んでくださりました。
さらにうれしいことに、売却情報を告知してから1ヶ月半ほどで、購入を強く希望される方(とっても素敵なご家族♪)が現れたんです!
そのご家族が内見される際には、可能な限り私も同席し、許可宅地であることを含めた土地・建物のメリットとデメリット、ご依頼主様の建物への愛着や売却に対する思いなども説明させていただきました。
そして、その時の出来事や感想の声などをご依頼主様にもしっかりお届けしました。
これは上司から教えてもらったのですが、不動産売買では「最初に手を挙げたお客様が一番ご縁のあるお客様」という傾向というか、ジンクスみたいなものがあるそうです。
今回のケースでもそんなジンクスそのままに、トントン拍子で話が進み、気づくと、ご依頼主様と購入希望のご家族との関係性も“相思相愛”になっていました。
ここで、許可宅地を購入する側の視点からの注意点について説明します。まず、行政から許可をいただいたからと言っても、それは一時的なものであり、「許可宅地である」ことに変わりはありません。つまり、購入された方に対しても、購入後はその土地・建物に対してさまざまな条件や制限が課せられます。原則としては、冒頭でもお伝えした通り、土地・建物を第三者に売却することはできません。そもそもなのですが、基本的な考え方としてあるのは、許可宅地を購入できるのは「永住できる方」に限って認められているということです。ですので、すでに持ち家があったり、通勤などに支障がある場所と判断された場合は、許可宅地の購入がNGになる可能性がありますので、注意が必要です。
「人の思いに寄り添い、真っ直ぐな気持ちで向き合う」
今回お伝えしたエピソードは、私にとって大きな経験であり、不動産仲介における新たな発見につながる出来事でした。最初は「よくある相続のケース」「できるだけ有利な条件で売れれば」くらいにしか思っていませんでしたが、ご依頼主様の思いだったり、ご購入いただいたご家族と接していく中で「不動産売買にも、人と人とのつながりだったり、人情の部分が大きく影響することがある」ということを学びました。「いかに気持ちの良い売買につなげられるか?」を考える上で、金額などの数字だけでなく、人の思いに寄り添ったり、真っ直ぐな気持ちで向き合うといったことも、不動産仲介の円滑油になることがよくわかりました。今後はそういった要素もしっかり意識しながら業務に取り組んでいこうと思っています。まだまだ勉強することばかりですが、先輩・上司のサポートを受けながら、ひとつひとつ実績を重ねていこうと思いますので、不動産に関するわからないことや困ったことなどありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。今回の許可宅地のケースからもわかるように「この土地は売買できるの?」「この建物に評価は付く?」といったことを事前に知っておくことはとても重要です。すぐに売買をする予定がなくても大丈夫ですので、あなたやご家族が所有する不動産に関してのご質問、また、お取引先や周囲の方からご相談を受けた際には、ぜひ、マストレ・藤川までご連絡ください。どんなにネガティブ要素の強い不動産であっても、きっと何とかしてみせます!