住宅展示場から生まれた、唯一無二のレストラン「bistorante_unico」

使われなくなった展示場に、新しい役割を A small patisserie on the shores of Lake Sanaru
家づくりの会社にとって住宅展示場は、お客様に住まいの魅力や暮らしのイメージを体感していただくための大切な場所です。
一方で、役目を終えた展示場を、その後どう活かしていくかもまた、家づくりの会社にとっての課題です。
花みずき工房の本社展示場も、かつては多くのお客様を迎えていましたが、時代とともに活用される機会が少なくなっていました。
「せっかくの建物を、このまま眠らせてしまうのはもったいない。
地域のために、何か新しい使い方ができないだろうか?」
そんなことを考えていた頃、ご縁があったのがルカスさんでした。
浜松で生まれ育ったルカスさんは、東京のイタリアンレストランで経験を積んだ後、地元へ戻って独立。
浜松市鴨江の約10坪の店舗を拠点に、ケータリングなどを中心とした料理の仕事を続けていました。
しかし、次第に店が手狭になり、次の場所を探し始めていたルカスさんに紹介されたのが、花みずき工房の展示場でした。
初めて建物を訪れたとき、その広さや雰囲気、周辺環境を見て「ここしかない」と感じたと言います。
一方、花みずき工房にとっても、ルカスさんとの出会いは転機になりました。
実際にその料理を味わい、一皿一皿に込められた技術や情熱、料理に向き合う真摯な姿勢に触れたことで、
「この人なら、この場所に新しい価値を生み出してくれる」と感じたのです。
こうして、住宅展示場からレストランへ。建物の新しい物語が始まりました。
「友達の家に招かれたような」レストランに
レストランへの改装では、住宅展示場としてつくられた既存の間取りをできる限り活かし、必要な部分だけに手を加えました。
ルカスさんが目指したのは、一般的なレストランとは少し違う空間です。
「友達の家に遊びに来たような感覚で、ゆっくり過ごしてもらいたい」
その言葉通り、店内に足を踏み入れてまず感じるのは、住宅ならではのゆとりです。
広い空間だからといって多くのテーブルを並べるのではなく、あえて席数を抑え、一組一組が周囲を気にせず食事を楽しめるようにしています。
大きなテーブル、落ち着いたインテリア、窓の向こうに広がる庭の緑。
レストランでありながら、誰かの家に招かれたような心地良さがあります。
内装には店のイメージカラーである黒を取り入れながら、もともとの展示場の雰囲気とも調和するよう、花みずき工房と相談しながら仕上げていきました。
ルカスさんにとって、料理を味わう空間もまた、料理そのものと同じくらい大切。
「空間も含めて“味”だと思っています」との言葉からも、その思いが伝わってきます。
住宅として設計された建物だったからこそ生まれた、レストランらしからぬゆとり。
それが今では「unico」ならではの魅力になっています。
一日数組だからこそ、できること
現在、unicoが迎えるのは一日2~3組ほど。貸切での利用にも対応しています。
効率を考えれば、広い店内にもっと多くの席を設けることもできるでしょう。
しかし、ルカスさんが大切にしているのは、たくさんのお客様を迎えることではなく、目の前のお客様に心地よい時間を過ごしてもらうことです。
そのスタイルは、特別な時間を過ごす場所を探している人たちからも支持されています。
両家の顔合わせや記念日、家族での食事、会社の会食など、利用の目的はさまざま。
常連のお客様からは、「個室のあるレストランはあっても、少人数で貸し切れる店はなかなかない」と喜ばれることも多いそうです。
食事を終えたからといって、急いで席を立つ必要もありません。
料理を味わい、会話を楽しみ、庭を眺めながらゆっくりと時間を過ごす。
「広々としていて落ち着く」「時間を忘れてしまう」というお客様の声は、ルカスさんが目指してきた店のあり方を、そのまま表しているようです。
高級食材ではなく、料理人の仕事で価値をつくる
もちろん、unicoの中心にあるのは料理です。
ジャンルでいえばイタリアン。
しかし、ルカスさん自身は、そこに強く縛られているわけではありません。
パスタなどイタリア料理のエッセンスを取り入れながら、その時々の食材や技法を自由に組み合わせ、目の前の素材をどうすれば最もおいしく提供できるのかを考えていきます。
なかでも大切にしているのが、食材選びです。
野菜や魚など、自分の目で確かめられるものはできるだけ自ら足を運んで仕入れ、鮮度や状態を確認します。
地元の食材を中心にしながら、必要であれば県外や海外の食材も取り寄せる。
産地そのものにこだわるのではなく、「その料理にとって何が最適か」を基準に選んでいます。
そして、もう一つ大切にしているのが、高級食材に頼りすぎないこと。
「高級な食材を使えば、ある程度おいしいものはできます。
でも、それだけでは“唯一無二”にはならないと思うんです」
身近な食材に手をかけ、料理人の技術によって新しい魅力を引き出す。
その考え方は、店名の「Unico」にも通じています。
コースは旬の野菜をふんだんに取り入れながら、季節に合わせて構成。
品数が多い分、一皿一皿が重くなりすぎないよう工夫し、ソースにも野菜を使うなど、最後の一皿まで心地良く楽しめるバランスを大切にしています。
料理をつくった本人が、料理を届ける
さらにunicoでは、料理だけでなく、その一皿がお客様のもとへ届くまでの時間も大切にしています。
料理を運び、食材や調理法について説明するのもルカスさん自身です。
「一流のサービスマンなら、もちろん素晴らしい説明ができます。
でも、実際につくった人間だからこそ話せることもあると思っています」
なぜこの食材を選んだのか。
どんな調理をしたのか。どこを味わってほしいのか。
料理人自身の言葉を聞いてから口にすることで、一皿の印象もまた変わります。
そして、そのやりとりをきっかけに自然と会話が生まれ、お客様との距離も近づいていきます。
食後の何気ない会話や、お客様を見送る時間も大切にする。
そうした一つひとつの積み重ねが、「またここに来たい」という気持ちにつながっているのでしょう。
食器やカトラリーにも、そんな「食事の時間を楽しんでもらう」ための工夫があります。
作家ものをはじめとした個性的な器を取り入れ、ときにはお客様自身が使う器を選べることも。
何を食べるかだけでなく、何に盛られ、誰とどんな時間を過ごすのか。
そのすべてを含めて、unicoでの食事となるのです。
建物を残すことから、新しい物語が始まる
家づくりの魅力を伝えるためにつくられた住宅展示場は、その役割を終えた後も壊されることなく、一人の料理人との出会いによって、多くの人が大切な時間を過ごす場所へと生まれ変わりました。
家族の顔合わせの日、大切な人の記念日、気心の知れた仲間との食事…。
ここで新しく生まれている一つひとつの時間を考えると、建物の価値は、完成した瞬間に決まるものではないのかもしれません。
誰が、どのように使い、そこでどんな時間を重ねていくのか。
花みずき工房が大切にしてきた「住まい」は、単なる建物ではなく、人の営みを包む場所です。
その考え方は、住宅展示場ではなくなった今も、この建物の中に息づいています。
大平台の静かな住宅街に佇む一軒のレストランには、古い建物をただ残すのではなく、次の使い手へとつなぐことで始まった、新しい物語があるのです。
【bistorante_unico(ビストランテ ウニコ)】
浜松市中央区大平台2丁目48-33 花みずき工房 本社展示場1階
営業時間:11:30〜14:30 (最終入店 13:00) 18:00〜23:00 (最終入店 21:00)
定休日:不定休
駐車場:3台(無料)※第2駐車場あり
