街の賑わいまで蘇らせた、マストレ海外事業部のオフィスリノベーション

出会ったのは、
古い建物ではなく可能性だった What we discovered was not an old building, but possibility itself.
新たな拠点を探していた私たちが卸商団地を訪れたとき、そこには決して華やかとは言えない風景が広がっていました。
卸商団地は、1960年代に浜松市の流通・商業機能を支える拠点として整備されたエリアです。かつては多くの卸売業者や企業が集まり、地域経済を支える重要な役割を担ってきました。
しかし時代の変化とともに企業の移転や事業形態の変化が進み、徐々に空き区画も見られるようになっていました。私たちが訪れた当時も、建物の老朽化が進み、街全体に少し静かな空気が漂っていたことを覚えています。
一方で、この街には長い年月をかけて培われたインフラや企業ネットワークがありました。交通アクセスにも恵まれ、十分な駐車スペースを確保できる環境が整っています。
そして何より私たちの目には、この街が持つ「まだ活かされていない可能性」が映っていました。
当時の海外事業部は、ヨーロッパを中心とした意匠建材やインテリア商材を取り扱い、デザインや空間づくりの価値を発信していました。
だからこそ私たちは、完成された場所に入るのではなく、自らの手で空間の価値を創り出せる場所を求めていました。
目の前にあったのは、確かに古く傷んだ建物でした。
しかし私たちには、その建物が魅力的なオフィスへと生まれ変わる姿が見えていました。
そして、その変化は建物だけにとどまらず、この街にも新しい可能性をもたらせるのではないか?
そんな期待が、卸商団地への移転を後押ししたのです。
ボロボロの建物を、
ブランドを体現する空間へ From a Dilapidated Building to a Space That Embodies the Brand
移転先として選んだ建物は、長年使われてきたことで老朽化が進み、そのままでは海外事業部の拠点として活用できる状態ではありませんでした。
しかし私たちは、この建物を単に修繕したり、きれいに改装したりすることだけを目的にはしていませんでした。目指したのは、海外事業部が取り扱う商品や価値観、そして私たちが大切にする空間づくりの考え方を体現できるオフィスです。
当時の海外事業部では、ヨーロッパを中心とした意匠建材やインテリア商材を取り扱い、お客様に上質な住空間や商空間をご提案していました。だからこそ、自分たちが働く場所そのものも、ブランドの世界観を感じられる空間でありたいと考えたのです。
このプロジェクトでは、グループ会社である花みずき工房の高い建築施工技術と、海外事業部が培ってきたデザインの知見を掛け合わせながら計画を進めていきました。
既存建物の特徴を活かしながら、素材選びやディテールにまでこだわる。新しくつくるのではなく、今ある建物の価値を最大限に活かし、その魅力を引き出していく。そんなリノベーションを目指しました。
当時、まだ目の前にあったのは古びた建物でした。しかし私たちの頭の中には、この場所で人が集い、アイデアが生まれ、海外の優れたデザインや建材の魅力を発信していく未来の姿が描かれていました。
リノベーションとは、建物を新しくすることではなく、新たな価値を創造すること。
このプロジェクトは、その想いからスタートしたのです。
最大の壁は「黒い外観」だった The biggest challenge was its black exterior.
オフィスの計画を進める中で、私たちが特にこだわったのが建物の外観でした。
海外事業部が取り扱うのは、ヨーロッパを中心とした意匠性の高い建材やインテリア商材です。お客様に提案する商品の世界観や価値を表現するためにも、建物そのものがブランドの顔となる必要があると考えていました。
そこで構想したのが、シンプルでありながら存在感のある黒を基調とした外観デザインです。
しかし、このアイデアを実現するには大きな壁がありました。
建物は卸商団地内の連棟建築の一角に位置しており、当時のルールでは外壁を既定の色以外で塗装することが認められていませんでした。
つまり、私たちが思い描いていた黒い外観は、そのままでは実現できなかったのです。
外観は一つの建物だけで完結するものではありません。団地全体の景観や街並みにも関わる重要な要素です。
だからこそ私たちは、自社のブランド表現だけを優先するのではなく、「なぜこのデザインを目指すのか」「それが団地にどのような価値をもたらすのか」を丁寧に説明しながら、卸商団地組合との協議を重ねていきました。
私たちが目指していたのは、自社だけが目立つ建物ではありません。
建物の価値を高めることで、この街の魅力向上にもつなげたい。
その想いを共有し続けた結果、組合の理解と協力を得ることができ、黒を基調とした外観デザインの実現へ向けて大きく前進することとなりました。
大家さんではなく、街づくりのパートナー
今回のオフィスリノベーションは、私たちの想いや努力だけで実現できたものではありません。プロジェクトを進める中で、改めて感じたのは卸商団地組合の存在の大きさでした。建物の価値を高めるためには、私たちが行う内装やデザインだけでは限界があります。建物そのものの健全性や安全性を維持するためには、屋上や外壁といった建物全体に関わる改修も欠かせません。
そこで組合は、屋上防水工事や外壁の補修・塗装といった大規模な改修工事を実施してくださいました。決して小さな投資ではありません。
それでも組合は、一つのテナントのためではなく、団地全体の資産価値向上や将来の可能性を見据え、このプロジェクトを支えてくださいました。私たちにとって、その姿勢は単なる貸主と借主の関係を超えたものでした。
建物の未来を考え、街の未来を考え、ともに価値をつくり上げていく。卸商団地組合は、まさに街づくりのパートナーだったのです。
こうした支えがあったからこそ、私たちはデザインや空間づくりに集中し、理想とするオフィスづくりに挑戦することができました。そして、この協力関係から生まれた一つのリノベーションは、やがて私たちが想像していた以上の変化を街にもたらしていくことになります。
オフィスが完成したことがゴールではなかった Completing the office was not an end in itself.
2016年2月、遂にマストレ海外事業部の卸本町オフィスが完成し、私たちはひとつの区切りを迎えたように感じていました。
しかし今振り返ると、それはゴールではなく、新たなスタートだったのかもしれません。
リノベーションによって生まれ変わった海外事業部のオフィスは、多くの方々の目を引く存在となりました。
「あの建物は何をしている会社なのですか?」
「卸商団地にこんな空間があるとは知らなかった。」
そんな声をいただく機会が少しずつ増えていきました。
そして、それまで静かな印象だった卸商団地にも少しずつ変化が現れ始めます。
新たに事業を始めたいと考える方や、店舗・オフィスを探している方々が団地に関心を持つようになり、出店や入居に関する相談が明らかに増えていきました。
もちろん、その変化は私たちだけの力によるものではありません。
卸商団地組合をはじめ、この街に関わる多くの方々が環境整備や魅力向上に取り組み続けてきた結果です。
しかし、その中で私たちのオフィスリノベーションが、「この街にはまだ可能性がある」と感じていただく一つのきっかけになれたのであれば、これほど嬉しいことはありません。
建物の価値を高めることは、単に見た目を変えることではありません。
人の流れを生み、新しい挑戦を呼び込み、街の未来につながる可能性を広げていくこと。
卸商団地での取り組みを通じて、私たちはそのことを実感することができました。
建物を変えることは、街の未来を変えること Changing a building means changing the future of a city.
マストレ海外事業部のオフィスリノベーションから約十年。
今の卸本町を歩くと、当時私たちが思い描いていた以上の景色が広がっています。個性的な店舗やオフィスが次々と誕生し、この街で新たな挑戦を始める人たちが集まるようになりました。
毎年多くの来場者で賑わう大規模マルシェ「アリィ」が開催されるなど、卸本町は浜松でも注目を集めるエリアの一つへと成長しています。また、その独特な街並みや雰囲気が評価され、映画や映像作品のロケ地として活用される機会も増えてきました。
かつて物流と商業を支える拠点として発展したこの街は、時代の変化を受けながらも、新たな魅力と役割を持つ場所へと進化を続けています。
もちろん、その変化は一つの建物や一社の力だけで生まれたものではありません。
卸商団地組合をはじめ、この街に関わる多くの事業者や地域の皆さまが、それぞれの立場で挑戦を続けてきたからこそ実現したものです。私たちのオフィスリノベーションも、その大きな流れの中の小さな一歩に過ぎなかったかもしれません。
それでも、建物の可能性を信じ、地域の価値を信じて取り組んだ挑戦が、街の未来へとつながる一助になれたのであれば、これほど嬉しいことはありません。
建物には、人を惹きつける力があります。
そして、その力が集まれば、街を変えることもできる。
卸本町での経験は、私たちにそのことを教えてくれました。
これからもマストレグループは、不動産・建築・デザインの力を通じて、人が集い、価値が生まれ、未来へつながる場所づくりに取り組んでいきます。
- PROFILE
- 名古屋市から転職してマストレ海外事業部に配属されて早15年。毎週全国を飛び回り、国産ロートアルミの訴求に日夜奮闘しています。
