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# 卸商団地
Journal lablab
2025.07.17

浜松で生まれた意匠建材の救世主、国産ロートアルミとは?

ものづくりの街として知られる静岡県浜松市。大手自動車メーカーや楽器メーカーが集い、精密な金属加工技術を磨いてきたこの地で、私たちは全国でも珍しい「ロートアルミ製品」の製造に取り組んでいます。「ロートアルミ製品」と聞いても、なじみのない方が多いかもしれませんが、これは中世ヨーロッパから伝わる伝統的な意匠建材であるロートアイアン製品を、鉄ではなくアルミニウムで製作したもの。 ロートアイアン特有の美しさをそのままに、鉄の弱点である赤錆や重量の問題を克服した、理想的な意匠建材で、近年では全国各地の意匠性を重視した建築シーンで幅広く採用され、上質な景観づくりに貢献しています。 そこで今回は、浜松生まれの国産ロートアルミの魅力と技術について、詳しくご紹介いたします。

意匠建材
ロートアイアンとは? What is wrought iron as an architectural design material?

浜松で生まれた意匠建材の救世主、国産ロートアルミとは?
ロートアルミを語るうえで、まずロートアイアンについて理解することが欠かせません。ロートアイアンとは、鉄を加熱して鍛造し、自由な形状に加工した建材や装飾品を指します。特にヨーロッパでは、古くから門扉やフェンス、手すり、照明器具などに用いられ、重厚でありながら繊細なデザインが高く評価されてきました。 「ロート(wrought)」は「鍛えられた」という意味を持ち、職人の手作業によって一つひとつ丹念に作り上げられる点が特徴です。意匠建材としてのロートアイアンは、単なる構造材にとどまらず、空間に独自の表情と品格をもたらします。日本国内でも、意匠性を重視する店舗や住宅などで広く採用され、多くのロートアイアンメーカーが活躍しています。

輸入から国内生産へ
品質を担保した国産ロートアルミ From Import to Domestic Production
High-Quality Wrought Aluminum Made in Japan

私たちマストレでは、約30年前からヨーロッパ製ロートアイアン製品の輸入販売を手がけ、多くの建築プロジェクトに提供してきました。もともとは、貿易業を主体とする海外事業部にて、イギリス製のロートアイアン門扉を輸入したことが始まりでした。国産品にはない手づくり感や重厚感、クラシカルな美しさが話題となり、特に首都圏を中心に販売数が順調に伸びていきました。 販路の拡大に伴い、サイズや色の特注依頼といった多様なご要望も寄せられるようになりましたが、同時に、輸入品特有のラフな作りを敬遠するお客様も現れるようになりました。
浜松で生まれた意匠建材の救世主、国産ロートアルミとは?
そこで「輸入するよりも国内で生産したほうが、よりきめ細かなサービスを提供できるのではないか」と考え、地元で自動車部品や設備の加工を行っていた金属加工業者と協力し、見様見真似ながら国産ロートアイアンの製造・販売を開始いたしました。 当初は門扉のご依頼が中心でしたが、現調から設計・製作、施工までを国内で一貫して行うサービスが受け、次第にフェンスや手すり、さらには室内階段の手すりやバルコニー手摺など、さまざまな建築シーンでのご依頼へと広がっていきました。

ロートアイアンの課題を超えた、ロートアルミの誕生 The Birth of Wrought Aluminum, Overcoming the Challenges of Wrought Iron

浜松で生まれた意匠建材の救世主、国産ロートアルミとは?
国産ロートアイアン製品は、順調に販路を拡大し、当初は門扉が中心だった製作依頼も、やがてフェンスや手すり、室内階段の手すり、バルコニー手摺などへと広がっていきました。現地調査から設計・製作、施工までを一貫して国内で行う体制が支持され、多様な建築シーンに応える製品として発展を遂げていきました。 しかし年月の経過とともに、特に屋外に設置された製品において「錆び」に関するクレームが急増します。ヨーロッパではロートアイアン製品を自ら手入れし、ペンキを塗り重ねながら長く使うのが一般的ですが、日本ではそのような習慣は根付いておらず、メンテナンスフリーを求める声が主流でした。私たちも、塗料の選定や塗装工程の見直しに取り組みましたが、鉄という素材の性質上、錆を完全に防ぐことは困難でした。 「そもそも鉄は錆びるもの」。そう考え、素材自体を見直す決断に至り、まずはステンレスへの切り替えを検討。しかし、製品価格が大きく上がることから現実的な選択とは言えませんでした。そこで注目したのが、鉄よりも遥かに加工が難しい一方で、軽量かつ錆びにくい「アルミニウム」でした。浜松に根付く精密な金属加工技術を活かし、手頃な価格帯を維持しながらも、美しさと耐久性を兼ね備えたロートアルミ製品の開発に挑戦し、次第にロートアイアン製品と見分けがつかないほど高い意匠性を実現することに成功しました。こうして私たちは、ロートアイアンの魅力をそのままに、より扱いやすく、長く美観を保てる新たな素材「ロートアルミ」を世に送り出すこととなったのです。

不可能を可能にした意匠建築の救世主

ロートアルミは、軽量かつ錆びにくいという特性により、従来のロートアイアン製品が抱えていたメンテナンス面での課題を大きく改善しましたが、アルミ特有の「軽さ」は、これまで構造上不可能とされていた意匠の実現にも、新たな道を切り開くことになります。実際にあったある富裕層向け老人施設の案件では、この「軽さ」がプロジェクトの成否を分ける決定打となりました。計画段階では、施設のエントランスに大きなロートアイアン製キャノピーを設置することが想定されており、それは建物の「顔」となる象徴的な意匠でした。ところが、実行段階に入ったところで、その重量が建物の構造に大きな負担をかけることが判明。計画は一時中断を余儀なくされます。軽量な既製品キャノピーへの切り替えも検討されましたが、意匠性に乏しく、施設全体の印象が損なわれるという理由から見送られました。
浜松で生まれた意匠建材の救世主、国産ロートアルミとは?
納期が迫る中お声がけ頂いた私たちが提案したのが、ロートアルミ製のキャノピーでした。見た目は当初のロートアイアン案と遜色なく、それでいて重量はわずか1/3。構造への負担を大きく軽減できるという点が決め手となり、即採用となりました。 結果として、建物は予定通り完成し、オーナー様にも大変ご満足頂き、建築会社様からも高く評価いただきました。ロートアルミは、意匠と機能性の両立を実現する、まさに建築現場における“救世主”としての可能性を証明したのです。

健やかな暮らしの提案から、街づくりのマストレへ From Proposals for Healthy Living to Becoming a Must in Urban Development

浜松で生まれた意匠建材の救世主、国産ロートアルミとは?
マストレ海外事業部が10年前に拠点を構えたのは、浜松市中央区卸本町。この地は、昭和42年に中心市街地の繊維問屋街から移転して形成された「卸商団地」で、かつては賑わいを見せた一大流通拠点でした。しかし時代の流れとともに空きテナントが増え、かつての活気は徐々に失われつつありました。そんなエリアに、あえて私たちが拠点を構えることを決めたのは、「街づくりを事業方針に掲げる企業として、衰退する街に再び息吹を取り戻したい」という想いがあったからです。この決断は、少なからず卸商団地の変化を後押しするきっかけとなったと自負しています。最初は、雨漏りの修繕や建物のリフォームといった小さな取り組みからスタートしましたが、外壁のカラーを一新し、意匠性の高い空間演出を施すことで、拠点はやがて「ちょっとオシャレなショールーム」として注目されるようになり、全国からロートアルミの相談に訪れる富裕層のお客様も足を運んでくださるようになりました。 その動きはやがて周囲にも広がり、空いていたテナントには次々と新しいショップが入居。現在では、おしゃれなレストランやインテリアショップのほか、ボルダリングジムやスケートボードパーク、イベントスペースなど多彩な施設が集まり、卸商団地全体に新たな風が吹き込まれています。 私たちは、そんな日々変化と再生を遂げるこの街から、今も全国各地の意匠性に優れた建築プロジェクトへ向けて、国産ロートアルミ製品を届け続けています。
tatsuyuki miyajimamiyajima
宮島 辰之
株式会社マストレ 海外事業部
PROFILE
名古屋市から転職してマストレ海外事業部に配属されて早15年。毎週全国を駆け回り、国産ロートアルミの訴求に日夜奮闘しています。
カレーとゲームが大好きです。
宮島

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