血圧の測り方、見直してみませんか?

血圧の、正しい測り方 How to measure blood pressure correctly
あなたは、“血圧の正しい測り方”についてご存知でしょうか?
毎日家庭で計測している方は「もちろん!」と答えるかもしれませんが、このコラムを機に改めて一緒におさらいしていこうと思います。
血圧の測定で一番大切なのは、何より ”正しい測り方” を知り、実践することです。どんなに最新で、どんなに高価な血圧計を使用していても、正しい測り方をしなければ、正しい測定値を導き出すことはできないのです。
以下に血圧の正しい測り方についてまとめました。
ぜひこれらを守った上で、体調管理にきちんと役立つ、正確な血圧データを測定できるよう努めていきましょう。
■ 測定のタイミング
朝と晩で1日2回、同じ腕でなるべく同じ時間に測定する
1回目:起床後1時間以内の朝食・服薬前
2回目:就寝の直前
■ 測定前に避けること(血圧に影響を与える条件・環境)
食事/飲酒/喫煙/膀胱充満(トイレをがまんする)/寒すぎる・暑すぎる環境/騒音のある環境は避けてください。また、上腕を締め付けるようなシャツ、タートルネックなどの着用も控えてください。
■ 測定中の注意点
楽な姿勢を取る/心身を安静にする/測定中の会話は避ける/カフの位置は心臓と同じ高さに保つことに注意が必要です。カフの位置が心臓の高さに合わせにくい場合は、腕の下にクッションなどをあてて高さ調整をしてください。
■ 正しい測定姿勢
血圧を測る際の姿勢もとても重要です。下記の表の正しい測定姿勢をご確認ください。
この中でも特に気をつけるべきなのが「カフの位置を心臓と同じ高さに保つこと」です。「カフ」とは、血圧計とつながった腕帯で、血圧を測定する際に上腕(もしくは手首)に巻くゴムの袋のことを指します。このカフの位置が心臓より高いと血圧は低く測定されますし、心臓より低いと高めに測定されてしまいます。例えば、カフと心臓の高さが10cm違うと、血圧値は約7mmHgも変わってしまうそうです。 家庭での血圧測定の正常値は 115/75mmHg 以下と言われていますから、もしもそれが7mmHgも変わってしまえば、それは到底健康管理に役に立つ正確なデータとは言えないということが、わかっていただけるのではないでしょうか。
ちなみに、“mmHg”というのは、血圧の単位で「ミリ・メートル・エイチジー」と読みます。“Hg”は水銀を表す元素記号ですので、「ミリ水銀」と読まれることもあります。例えば、“血圧115mmHg”ということは「水銀を115mm押し上げる力」ということです。
カフについてさらに補足しますと、カフの”巻き方”や“幅”にも注意が必要です。カフをキツく巻いてしまうと血圧は低く測定されますし、逆にゆる過ぎると高い数値となってしまいます。カフの巻き方としては、指が1~2本入る程度が最適で、カフの幅は(腕の太さの1.2~1.5倍)が最適とされています。
些細なことでも変化する血圧 Blood pressure changes due to minor factors
これまでご紹介してきた「血圧の正しい測り方」は、「そんなことは知っている」と感じた方も多いかもしれません。では、なぜそのような測り方をする必要があるのでしょうか。いくつかのルールや注意点が一見わずらわしく思えても、それぞれにきちんとした理由があります。
血圧は、一日の中で常に変動しています。これは健康な方でも同じです。なぜなら、血圧は心臓の働きと深く関わっているからです。血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際、血管の壁にかかる圧力のことを指します。朝に血圧が上がるのは、心臓が身体を活動へと切り替える準備をしているためです。
通常、血圧は睡眠中に最も低く、起床前からゆっくりと上昇し、日中の活動量が多い時間帯に高くなります。そして夕方にかけて徐々に下がり、就寝中に再び低下します。このため、血圧が上がりきる前の「朝」と、下がりきる前の「就寝前」に測定することが推奨されています。
さらに、血圧は些細な刺激でも変化しやすく、気分や精神状態にも敏感に反応します。不安や緊張といったストレスは血圧を上昇させるため、測定には不都合な要因です。たとえば、病院の診察室で測った血圧が家で測るより平均5mmHgほど高くなるのは、診察時の緊張によるものだと言われています。そのため、高血圧の診断では医療スタッフが測定する「診察室血圧」だけでなく、自分で測る「家庭血圧」が重要な判断材料となることがあります。
人は強いストレスを感じると、脳がそれを察知して“交感神経”の働きが活発になります。交感神経には心拍数を増やしたり血管を収縮させたりする働きがあり、結果として血圧が上昇します。測定の際に「リラックスした姿勢で安静に」と言われるのはこのためです。測定前には1〜2分ほど椅子に座って心身を落ち着かせたり、深呼吸をすることも勧められています。また、一度に2回測定して平均値を記録すると、より正確な数値が得られます。
血圧は、長期的なデータにこそ意味があります。一日の中で最も安定した時間帯を選び、できるだけ毎日、同じ時間・同じ条件で測定しましょう。あなたの健康は、あなた自身の積み重ねによって守られていくのです。
測定する習慣を身につけよう! Get into the habit of measuring!
最後にお伝えするのは「最高血圧」と「最低血圧」、そして「平均血圧」についてです。
最高血圧(収縮期血圧)とは、心臓が収縮して血管内に血液が流れ込み、血管が最大に膨張した状態をいいます。
反対に最低血圧(拡張期血圧)は、心臓が拡張して血管内から血液の一部が心臓に戻り、血管内の血液が最小になった状態をさします。
最高血圧と最低血圧から導き出されるのが、平均血圧です。
平均血圧の計算式は(最高血圧-最低血圧)÷3+最低血圧。
ちょっと特殊な式ですね(笑)。単純に(最高血圧+最低血圧)÷2ではないので注意してください。
ここまで読んでくださった方の中には、「まだ自分には関係がない」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、高血圧は日本において国民病ともいえる病気であり、患者数は約4,300万人と推定されています。これは、なんと日本人のおよそ3人に1人が高血圧であることを意味しています。
今は関係ないと思っている方も、ご自分あるいはご家族のために、いずれは必要になる知識、そして身に着けるべき習慣と言えるのではないでしょうか。
オムロン ヘルスケア株式会社が2021年に50代~60代の高血圧患者の男女1,036人を対象に行なった調査では、40%の方が「もっと早くから(30代~40代)家庭での血圧測定を始めておけばよかった」と回答しています。高血圧は自覚症状がほとんどないため、知らずに、あるいは「たかが」と軽く考えて放置してしまう方が多い病気なんだそうです。
しかし高血圧を放置すると、心疾患や脳卒中、慢性腎臓病などの重大な病気を引き起こす可能性もあり、慎重に気をつけなければならない病気のひとつです。
繰り返しになりますが、血圧測定をする際には「正しい測り方」を実践することを忘れないようにしましょう!
そして、正しい測り方を実践して、日々の健康管理をより実り多いものにしていきましょう!
- PROFILE
- 浜松生まれ、浜松育ち、今後も浜松で暮らしていきます。
