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Journal lablab
2025.11.30

医療の“値段”は、いったいどうやって決まるのか?

〜 医療機器の現場に立ち続けてきたからこそ伝えられる、制度と医療の関係性 〜

心臓カテーテル治療に
特化した医療機器を担当 Responsible for medical equipment specialized in cardiac catheterization

医療の“値段”は、いったいどうやって決まるのか?

以前は医療機器メーカーに勤めており、脳外科や血管内治療、肝臓、下肢など、いわゆる“全身のカテーテル治療”に関わる製品を扱っていました。

マストレメディカルに転職したのは2009年。現在は、心臓カテーテル治療に特化した医療機器を担当しています。

浜松医療センターは専任で受け持っていて、実際の治療や手術時に立ち会ったりなどし、医師からの質問にすぐに答えられるよう待機しています。

症例の内容を聞いたらすぐに「この器具が必要になるな」「この消耗品はこれくらいの量を用意しておかないと」と判断する必要があり、病例についてや医療器具の細かな仕様までしっかり頭に入れておくことが大切です。

時には医師から「この器具とあの器具を併用しても大丈夫?」といった専門的な質問を受けることもありますからね。

現状、全身の血管に対応できる担当者は社内で私一人だけですので、責任は大きいですが、その分、やりがいも大きいです。

「保険診療」と
「自由診療」の違い The difference between "insurance medical treatment" and "private medical treatment"

医療の“値段”は、いったいどうやって決まるのか?

さて、ここから今回のテーマである「保険点数制度」についてのお話です。

日本には「保険診療」(保険がきく医療)と、「自由診療」(保険がきかない医療)の2種類があります。

保険診療では、診察・検査・手術などの医療行為ごとに、国が「保険点数」を定めており、その点数表は全国統一です。

医療の“値段”は、いったいどうやって決まるのか?

原則として1点=10円で計算されますので、例えば「初診料288点」であれば、費用は2,880円(保険適用前の点数ベース)となります。

そのうち、患者さんが1~3割を負担し、残りを国や自治体などが病院に支払います。

一方で自由診療というのは患者さんの10割負担となり、美容医療や妊娠健診、保険適用前の最新治療などが該当します。

なぜ医療の値段を国が
決めているのか? Why does the government set the price of medical care?

医療の“値段”は、いったいどうやって決まるのか?

では、なぜ国が医療の値段を決めているのでしょうか? 理由は大きく3つあります。

 

1.どこに住んでいても同じ価格で医療を受けられるようにするため

2.安売り競争になって医療の質が下がらないようにするため

3.反対に過疎地域などで必要以上に高額な医療が生まれることを防ぐため

です。

 

そしてもうひとつ重要なのが「医療費の一部は税金でまかなわれている」という点です。医療費が増えすぎると国の財政が破綻してしまうため、国で医療の値段(保険点数)を管理しているのです。

保険点数だけでなく、医療機器や薬剤の価格も国が決めており、2年に1度見直すことで、財政とのバランスを取っています。

それでも2023年度の医療費は47.3兆円にまで膨れ上がっているが現状です。

今後さらに高齢化が進むことで、国も病院も厳しい状況へと進んでいくでしょう。

国も苦しい・病院も苦しい・現場も苦しい。この三つ巴の構造が続いていることを、現場でも強く感じています。

私たちが取り扱う医療
機器に関する課題 Issues regarding the medical devices we handle

医療の“値段”は、いったいどうやって決まるのか?

「保険点数制度」と一部関わる内容ですが、マストレメディカルで取り扱う医療機器についても、近年、目を背けられない問題が起こっています。

それは医療機器価格の値上がりです。

前述した通り、医療機器の価格というのも日本では国が定めているのですが、現状、医療機器の多くは海外製ですので、円安の影響を強く受けます。そのため、メーカー側のコスト率が上がると価格バランスの対応が難しく、製品によっては「使えば使うほど病院が赤字になる」というケースも少なくありません。

また、例えばアメリカでは中間業者がいないため、病院が直接メーカーとやり取りをしますが、日本では中間業者(私たちのような立場)が機器の知識を持ち、必要な場面で医師をサポートする体制となっています。

実際、私たちのような“サポート役”がいないと、医師が最新機器の仕様や相性まですべて把握しなければならず、多大な医療リスクとなります。こうした役割分担のおかげで医療体制が整っている部分も確かにありますが、この役割分担が医療機器価格のネックになっているというジレンマもあるのです。

安心でき医療の現場を「裏側から支える力」に To be a reliable "supporting force behind the scenes" in the medical field

医療の“値段”は、いったいどうやって決まるのか?

以上、簡単ではありますが、日本の医療現場における「保険点数制度」についての説明と、その裏側にある思惑やリスクなどについてお話いたしました。

“制度と現場のねじれ”がある中で、私たちの立場としても「医療機器をどう届けるのが最適か?」「より良い治療のためにどう組み合わせていくか?」を常に判断しながら動き続けていくことが重要となります。

制度が変われば、医療も変わり、私たちの役割も微妙に変化していきます。

そういった流れを肌で感じながら現場を支えていくことが、何より大切なのではと考えています。

単に医療機器を届けるのではなく、どう使うべきか? どの組み合わせが良いのか? 制度上の制約はどう影響するのか? まで深く理解し、医師が安心して治療に向き合えるよう準備をする。

それが、私たちの使命であり、医療の現場を裏側から支える力になると思います。

yuuichirou gotougotou
株式会社マストレメディカル メディカル事業部
PROFILE
全身の血管に対応できる担当者は社内で私一人だけです。医療機器や医療の現場に関する深く、専門性の高い知識を培ってきましたので、質問などございましたらお気軽にご相談ください!
保有資格: 医療機器情報コミュニケータ(MDIC)
行き先も何も決めずに、一人気ままにドライブ旅行をしています
後藤

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