「家で暮らしたい」を支える。福祉用具のプロが大切にする、人と人の介護

「家に帰りたい」という声に、もっと応えたい I want to do more to answer the wish to "go home."
私は2026年3月にマストレメディカルへ入社し、介護事業部で福祉用具のレンタルや販売などを担当しています。
入社してからはまだ半年ほどですが、介護や福祉用具の仕事には長く携わってきました。
以前は医療機器の専門商社で、介護用品のレンタルや販売などを担当し、その中で介護支援専門員、いわゆるケアマネージャーの資格も取得しました。その後、特別養護老人ホームで約9年間、生活相談員やケアマネとして、利用者さんやご家族からの相談、ケアプランの作成、多職種との調整などに携わってきました。
そんな私が、もう一度「在宅介護に関わりたい」と思うようになったきっかけのひとつが、施設で何度も耳にした「家に帰りたい」という言葉でした。
もちろん、施設だからこそできる支援もたくさんあります。それでも利用者さんと接していると、「できることなら住み慣れた家で暮らしたい」「最期は自宅で迎えたい」と望まれる方が少なくありませんでした。
その想いを少しでも叶えるために、自分にもできることがあるのではないか。
福祉用具や住環境という側面から、できるだけ長く、安心して自宅での暮らしを続けられるよう支えたい。
そう考えたことが、マストレメディカルへ転職する大きなきっかけになりました。
福祉用具の先にある「暮らし」を見る Looking Beyond Welfare Equipment to the Life It Supports
特養でケアマネを経験したことは、現在の仕事にも大きく活きています。
介護ではまず、その方がどのような状態にあり、何に困り、これからどのような生活を望んでいるのかを把握する「アセスメント」が重要です。そのうえで課題を整理し、必要な支援を考えていきます。
そして介護は、一人の専門職だけで完結するものではありません。
ケアマネを中心に、介護職員や看護職員、医療職、リハビリを担当する療法士、福祉用具の専門職など、さまざまな立場の人がチームとなって、一人の利用者さんの暮らしを支えています。
例えば、「自分で起き上がることが難しくなってきた」という方がいたとします。
介護職であれば日常生活の介助、療法士であれば身体機能、福祉用具の専門職であればベッドや手すりなど、それぞれの専門性から「何ができるのか」を考えていきます。
以前の私であれば、福祉用具を納品した後も、製品の状態や使い心地など、どうしても「用具」そのものに目が向いていたと思います。
しかしケアマネを経験した今は、定期的なモニタリングでお宅を訪問した際にも、「以前より動きにくそうではないか」「食事はきちんと取れているだろうか」と、その方の暮らし全体を見るようになりました。
福祉用具は、暮らしを支えるためのひとつの手段です。
大切なのは、用具を見ることではなく、その先にいる「人」を見ること。
それは、ケアマネとして利用者さんの生活全体に向き合ってきたからこそ身についた視点だと思っています。
それぞれの専門性をつなぐ「潤滑油」に Connecting Expertise as a “Bridge”
現在は、ケアマネさんから相談をいただき、利用者さんの身体の状態や住環境を確認しながら、必要な福祉用具をご提案しています。
私自身もケアマネを経験しているため、「今、どんな情報を必要としているのか」「何を考えてこの相談をしているのか」を、ある程度想像することができます。
また、施設で働いてきた経験から、介護職や看護職など、それぞれの専門職がどのような視点で利用者さんを見ているのかも理解できます。
だからこそ、福祉用具の専門家でありながら、チームの中では人と人をつなぐ「潤滑油」のような存在になれたらと思っています。
求められた福祉用具を提案して、それで終わりではありません。
他の専門職とも情報を共有しながら、「この方にとって、本当に必要な支援は何だろう」と一緒に考えていく。
福祉用具という自分の専門領域を持ちながら、チーム全体でその人の暮らしを見ることを大切にしています。
介護の現場でもICT化が進み、以前に比べて情報共有は格段に便利になりました。
一方で、効率化が進むからこそ、仕事を細かく分けすぎることで失われてしまうものもあるのではないかと感じています。
継続して関わるからこそ、気づける変化 Noticing Change Through Ongoing Support
マストレメディカルでは、最初のアセスメントから福祉用具の搬入、その後のモニタリングまで、基本的に一人の担当者が継続して利用者さんに関わります。
効率だけを考えれば、「提案する人」「届ける人」「点検する人」と役割を分けた方が合理的なのかもしれません。
それでも私は、一人の担当者として継続して関わる今のスタイルを大切にしたいと思っています。
同じ担当者が定期的にお会いするからこそ、「前回より少し動きづらそうだな」「今使っている用具が合わなくなってきたのではないか」といった、小さな変化にも気づきやすくなります。
何度も顔を合わせる中で、利用者さんやご家族との信頼関係も少しずつ生まれていきます。
介護の現場は、結局のところ「人と人」です。
AIやICTがこれからどれだけ進化しても、目の前の人の表情や暮らしを見ながら、「今、本当に困っていることは何だろう」と考えることの大切さは変わらないと思っています。
イメージとしては、地域に昔からある小さな電気屋さんに近いのかもしれません。
「ちょっと困ったことがあって」と相談すれば顔を見せてくれて、頼まれたことだけでなく、その先まで見てくれる。
そんな「かゆいところに手が届く」ような、人と人の関係が見える介護も、地域で安心して暮らし続けるためには必要なのではないでしょうか。
現場にしかない「生きた情報」を次の世代へ Passing On Real-World Knowledge to the Next Generation
今はインターネットで検索すれば、福祉用具の商品情報から介護保険制度まで、さまざまな情報を簡単に調べられるようになりました。
これからは福祉用具にもAIをはじめとした新しい技術が取り入れられていくでしょう。私自身も、新しい商品や制度について学び続けていかなければなりません。
一方で、インターネットで得られる知識だけではわからないことが、介護の現場にはたくさんあります。
同じような身体状況であっても、暮らしている家や家族構成、生活習慣が違えば、必要な支援は変わります。
カタログでは便利に見える福祉用具が、その方の暮らしには合わないこともある。
反対に、ほんの少し使い方を工夫するだけで、それまで難しかったことが自分でできるようになることもあります。
一人ひとりの暮らしを実際に見て、話を聞き、試行錯誤してきたからこそ得られる「生きた情報」。
それを提案に活かせることが、介護のプロとしての価値のひとつだと思っています。
そしてもうひとつ、これまで自分が利用者さんやご家族、さまざまな専門職の方々から教えてもらったことを、次の世代へ伝えていくことも、これからの役割だと考えています。
便利な技術は積極的に取り入れる。それでも最後に大切にするのは、「人と人」の関わりです。
利用者さんやご家族の声に耳を傾け、目の前の暮らしを見ながら、その人にとって必要なことを考える。
そして、求められたことに応えるだけでなく、その一歩先まで提案できる。
そんな福祉用具の専門家として、これからも地域の在宅介護を支えていきたいと思っています。
- PROFILE
- 昔から古道具が好きで、レトロなストーブやランタンなどを収集。奥様も古道具が好きで、庭に飾ったり、鉢として活用しながら庭いじりを楽しんでいる。また、娘さんの新体操の応援に行くのも楽しみのひとつ。
